5月29日:新型コロナウイルスの影響に関する緊急アンケート調査結果(※医療機関患者受診状況・保険診療収入の増減など)
新型コロナウイルス感染症・累積陽性者の推移は4月にピークを迎え、現時点では落ち着きを取り戻しつつあります。「STAY HOME週間」など、国民努力によるところが大きく影響しておりますが、この間、医療機関では新型コロナウイルスに関連する受診控えが加速、受診患者が減少し、それと連鎖するように収入減となった医療機関が数多くあります。また、少数ではありますが、今回のことをきっかけとした従業員解雇も発生している状況です。
今後、受診控えは続く可能性があり、また、第2波が起これば、医療機関では慢性的な患者減、収入減に陥り、地域医療を担う一般医療機関の経営を揺るがしかねない状況となります。
県内医療機関の本年4月の受診状況や収入状況について調査を行いましたのでご報告致します。
【調査方法】
実施期間: 2020年 5月 7日(木)~ 5月 12日(火)
実施方法: 当会に所属する医師・歯科医師の会員医療機関宛にFAXで調査用紙を送信。
※FAX送信数:医科診療所(864件)、歯科(727件)の合計1,591医療機関に送信。
回答数:医科: 864 件に対し 378 件回答(44%)
歯科: 727 件に対し 176 件回答(24%)
全体: 1,591 件に対し 554 件回答(35%)
【調査結果】
設問1:外来患者数の推移(今年4 月と前年4 月の比較)
(1)変化なし
(2)増えた
(3)減った
(1)変化なし | (2)増えた | (3)減った | |
医科 | 8% | 2% | 90% |
歯科 | 4% | 1% | 95% |
全体 | 6% | 1.5% | 92.5% |
※設問1(3)『減った』割合の内訳
~30% | ~50% | ~70% | ~70%以上 | 無回答 | |
医科 | 65.7% | 23.8% | 4.3% | 2.5% | 3.7% |
歯科 | 62% | 22% | 5.3% | 3.6% | 7.1% |
全体 | 63.8% | 22.9% | 4.8% | 3.1% | 5.4% |
今年4 月の外来患者数は、前年同月比9 割の医療機関で減少しています。減少率は、医科・歯科ともに同様の傾向がみられ、30%未満の患者減少が最も多く6 割を占めています。
外来患者減少は、新型コロナウイルスに関連した受診控えの影響が大きい状況です。特に歯科では、患者からの予約延期やキャンセルの依頼件数が8 割の医療機関で増えたと回答しています(※医科では5 割の医療機関が増えたと回答)。その他、歯科では、診療日数や診療時間を減らしているところも4 割弱ありました(※感染防止、緊急事態宣言、患者減が主な理由)。アンケートでは、「収束後、受診控えが浸透してしまうのではないか」「コロナが落ち着いても来院数はすぐに増加しないだろう」という声が目立ちます。
また、患者側からは「いつまでも飲み薬の処方だけでは不安」という声もあがっています。受診控えにより診察間隔が従来よりも長くなる、検査が先延ばしになること等により体調の悪化が懸念されます。受診間隔をのばすことができるか等、不安なことは主治医にすぐ相談することが大切です。
設問2:保険診療収入の状況(今年4 月と前年4 月の比較)
(1)変化なし
(2)増えた
(3)減った
(1)変化なし | (2)増えた | (3)減った | |
医科 | 8.4% | 2.7% | 88.9% |
歯科 | 5.2% | 0.6% | 94.2% |
全体 | 6.8% | 1.7% | 91.5% |
※設問2(3)『減った』割合の内訳
~30% | ~50% | ~70% | ~70%以上 | 無回答 | |
医科 | 64.3% | 21.6% | 4.7% | 1.9% | 7.5% |
歯科 | 62.7% | 21.3% | 4.7% | 4.2% | 7.1% |
全体 | 63.5% | 21.4% | 4.7% | 3.1% | 7.3% |
外来患者数の減少と同様、保険診療収入も減少傾向にあります。昨年4 月と比較すると、約9 割の医療機関で減収となっています(※減収幅は30%未満と回答する医療機関が6 割を占めている)。
収入減少に対する意見として「今後、職員給与の支払い、業者への支払いが大変」「収入減少の中でスタッフの雇用を維持することが厳しくなる」「家賃未払いの状態」といったコメントが寄せられています。保険診療収入は2 か月後に支払われるので、4 月の減収状況が反映されるのは6 月下旬です。6 月以降の医院運営に影響が及ぶと考えられます。
売上減少対策の一つとして「持続化給付金」があげられますが、前年同月比で売上が50%減少というところまでは至らずに給付金の申請ができない医療機関が数多く存在します(※減収幅が50%未満となる医療機関は84.9%)。
給付金や助成金、融資等の申請予定については、医科で3割、歯科で5割が申請を予定している状況です。
なお、このような状況下でスタッフの勤務調整を行っている医療機関は医科で3割、歯科で5割ありました。やむを得ず従業員解雇に至った医療機関は医科2件、歯科2件となっております。
設問3:国や自治体に希望する支援策(複数回答)
(1)損失への補償(給付金)
(2)人件費の補助
(3)家賃補助
(4)資金繰りの補助(融資等)
(5)納税等の猶予措置
(6)その他
(1)損失補償 | (2)人件費補助 | (3)家賃補助 | (4)資金繰り | (5)納税猶予 | (6)その他 | |
医科 | 34.7% | 24.3% | 7.2% | 15% | 14.6% | 4.2% |
歯科 | 27.7% | 25.3% | 10% | 15.7% | 18% | 3.3% |
全体 | 31.2% | 24.8% | 8.6% | 15.4% | 16.3% | 3.7% |
二次補正予算に伴い、新たな支援策も打ち出されているところですが、多くの医療機関が求めている支援策は、減収に伴う損失補填、医院経営が厳しくなる中での人件費補助です。
特に経営体力が弱い小規模医療機関は、今後も患者減や減収が続けば、閉院を検討せざるを得ない医療機関が出てくると考えられます。
弊会では、収入減に対応するため給付金等の要件緩和、最前線で感染症と闘う医療従事者に対する感染時補償の充実を求めています。
アンケート「その他」にあげられた意見では、「感染者に対応している医療機関は診療報酬倍増や給付金があるが、一般医療機関も感染対策を講じて頑張っているので対応が必要」「小規模診療所は一人医師が多く、感染したら休業を余儀なくされる。代診派遣システムが必要」といったものがあります。
設問4:医療資材の現時点での確保状況(発注中で未着のものは含まない)
<医科>
充足 | 在庫1月以内 | 在庫半月以内 | 在庫1週間以内 | 既に在庫なし | 無回答 | |
医療用 マスク | 33% | 46% | 14% | 2% | 1% | 4% |
手指消毒剤 | 24% | 49% | 17% | 4% | 2% | 4% |
グローブ | 39% | 44% | 12% | 1% | 2% | 2% |
防護服 | 11% | 16% | 9% | 10% | 43% | 12% |
<歯科>
充足 | 在庫1月以内 | 在庫半月以内 | 在庫1週間以内 | 既に在庫なし | 無回答 | |
医療用 マスク | 49% | 40% | 7% | 1% | 1% | 2% |
手指消毒剤 | 33% | 45% | 13% | 2% | 6% | 1% |
グローブ | 47% | 39% | 9% | 2% | 2% | 2% |
ゴーグル | 44% | 15% | 5% | 1% | 23% | 12% |
フェイス シールド | 31% | 18% | 9% | 2% | 31% | 10% |
医療資材については、サージカルマスクなど以前と比べ供給が円滑になりつつある資材もありますが、全般的には依然として不足した状況が続いています。
弊会では、国による医療機関への医療資材の更なる優先供給、入手経路の確保を求めています。