新型コロナウイルスの影響に関するアンケート調査結果(第2弾)※医療機関患者受診状況・保険診療収入の増減など


新型コロナウイルス感染症の流行において、政府は5月25日に緊急事態宣言を全面解除しました。

第1波のピークがあった4月、外来患者の減少が見られた医療機関に果たして患者は戻ってきたのか-。茨城県保険医協会は先(5月29日)に発表した4月診療分影響調査に続き、5月診療分と6月診療分についても調査を行いましたので、その結果を報告します。

今回の調査では、①前年比での患者数の推移、②保険診療収入の推移のほか、③国・自治体等の助成金や融資等の利用状況、④医療機関が困っていること・行政への要望等を調査しました。

今、感染拡大の「第2波」の兆しが見られます。地域医療は病院と診療所の連携・役割分担で営まれており、個別医療機関が立ち行かなくなれば、その地域の医療提供体制にも影響します。感染拡大に適切に対応するためにも、医療機関の立て直しは急務となっています。

【調査方法】

 実施期間: 2020年 6月 29日(土) ~ 7月 3日(金)
 実施方法: 当会に所属する会員(医師・歯科医師)に調査用紙を郵送し、FAX で回答を回収。
  ※FAX送信数:医科(909件)、歯科(934件)の合計1,843 件の医療機関に送信。

 回答数:医科: 909 件に対し 225 件回答(24.8 %)
     歯科: 934 件に対し 179 件回答(19.2 %)
     全体: 1,843 件に対し 404 件回答(21.9 %)

【調査結果】

1 外来患者数の推移

茨城県保険医協会が5月29日に発表した前回の影響調査では、4月の外来患者数は、前年同月比で9割の医療機関で減少していました(図1、図2)。

今回、5月分と6月分について、それぞれ前年同月比での患者減少を調査しました。それによると、緊急事態宣言が続いた5月も外来患者数は9割の医療機関が減少(図3、図4)、緊急事態宣言が解除された6月分をみても86%の医療機関が減少(図5、図6)し、外来患者は戻ってきていませんでした。

「外来患者数の推移」で4月分調査の時は、前年同月比で医科歯科ともに30%以下の患者減少が最も多く、6割を占めていました(図7、図8)。

5月分調査(図9、図10)、6月分調査(図11、図12)と推移するにつれ、「30%以下」の患者減少が増えていました。

しかし、依然として外来患者は戻っておらず、患者さんは本来必要であった受診を手控えている状況が続いていした。

なお、患者の受診手控えによる症状悪化の実態については、茨城県保険医協会が7月2日に「新型コロナウイルスの影響に伴う外来患者減少理由・患者の症状変化に関する緊急調査結果」を発表していますので、そちらをご覧ください。

2 保険診療収入の推移

外来患者数の推移は保険診療収入の推移を反映します。

前回の調査では、4月の保険診療収入の推移は、前年同月比で9割の医療機関で減少していました(図13、図14)

緊急事態宣言が続いた5月も保険診療収入の推移は9割の医療機関が減少(図15、図16)、緊急事態宣言が解除された6月分をみても84%の医療機関が減少(図17、図18)と、大きな変化は見られませんでした。

図19から図24に保険診療収入の減った割合を掲載しました。これらについても「1 外来患者数の推移」とほぼ同じ動きが見られます。

診療報酬が医療機関に振り込まれるのは診療月の2か月後です。大幅減収となった4月分診療報酬が振り込まれるのは6月下旬です。5月、6月も医療機関の減収は深刻で、長期間の収入減が続けば、資金ショートの危機に直面します。

コロナによる減収減益に対する補償は「持続化給付金以外」にはありません。しかし、持続化給付金の支給要件は極めて厳しく、該当する医療機関は少数です(図27、図28)。医療機関は公私を問わず、国民の健康を守るために公的役割を果たしています。医療機関の多くは経常利益が2%以下(第22回医療経済実態調査)と低いために、コロナ等のリスクに対応できる十分な内部留保を持っている医療機関はごく限られています。経営困難に陥っている医療機関全体への公的支援を行わないと、今後コロナの第2波が起こったときに、医療機関の経営破綻で患者も医療機関を受診できなくなる危険があります。

3 国・自治体等の助成金や融資等の利用状況

4 医療機関として困っていること、行政や保険医協会への要望等

<経営に関するもの>

  • マスクやアルコールなど衛生材料の不足・高騰(15)
  • 受診減・収入減・赤字(13)
  • ゴーグルやガウンなどの感染防護具の不足(12)
  • 給付金補助金等の情報不足(9)
  • 風評被害(歯科)(9)
  • 感染対策経費や従業員への給与支払い(5)
  • 給付金制度の改善(5)
  • 職員の離職、採用難(4)
  • 収入保障(4)
  • 受診勧奨のキャンペーンを(歯科)(3)
  • レセプト平均点数の上昇で個別指導が心配(2)
  • 社労士報酬が高い(1)
  • 院長の労災不適用(1)
  • 納税が困難(1)
  • 保険点数の単価引き上げ(1)

<検査や診療に関するもの>

  • 検査体制の整備(7)
  • インフルエンザ流行期の診療対応が不明(5)
  • 発熱患者の扱い、動線確保(5)
  • 発熱患者の鑑別診断(3)
  • 地域での発熱外来(2)
  • 従業員の定期的なPCR検査、抗体検査(1)
  • 陽性患者が出た場合の支援不足(1)
  • 都内や千葉からの患者の来院が困る(1)