新型コロナウイルスワクチン接種に関するアンケート・医療機関への影響調査結果


 新型コロナウイルスのワクチン接種が開始され、連日、ワクチン接種に関する様々な報道がされています。県内では個別接種を希望する患者等も多く、日常診療と並行してワクチン接種業務を行う医療機関が多数存在します。そのような中、医療機関ではワクチン接種に関する問い合わせ等により日常診療に支障をきたしているとの声が寄せられております。
 今回、新型コロナウイルスワクチン接種が開始されたことによる、県内医療機関への影響調査を行いましたのでご報告いたします。

【調査方法】

 実施期間: 2021年 6月 11日(金)~ 23日(水)
 実施方法: 当会に所属する医師の会員医療機関宛にFAXで調査用紙を送信。
  ※FAX送信数:医科診療所(780件)、病院(103件)

 回答数:医科診療所:780件に対し 229件 回答(29.4%)
     病   院:103件に対し 24件 回答(23.3%)
     全   体:883件に対し 253件 回答(28.7%)

【調査結果概要】 

 今回、新型コロナウイルスワクチン接種に関する医療機関への影響調査を行ったところ、当会会員医療機関253 件(回答率28.7%)から回答を得ました。ワクチン接種を行う医療機関は全体で84.6%、そのうち「個別接種」を行う医療機関は89.7%、集団接種を行う医療機関は58.9%でした。
 国難ともいえる状況を乗り越えるべく、多くの医療機関がワクチン接種を担っていますが、日常診療と並行してワクチン接種業務に協力しているのが実情です。新型コロナウイルスのワクチン接種は、一時に多数の国民に接種が行われます。対応する医療機関にかかる負担は大きくなり、接種に関わる現場の疲弊は今後の大きな課題となっています。具体的には日常の診療業務に加え、ワクチン接種に関する接種希望者等からの問い合わせ対応、接種情報の複数システムへの入力、予診対応、ワクチン接種と多岐にわたる業務がプラスされています(※個別接種に対応しない医療機関では、対応できない一番の理由としてスタッフ不足があげられています)。
 ワクチン接種に関する患者からの問い合わせは、平均すると1 日1~10 件が最多でしたが、1 日の問い合わせが最大で100 件以上寄せられた医療機関も複数確認されました。問い合わせの内容は、「接種予約」に関する内容が92.7%、「かかりつけ医のいない患者から接種可能かどうかについての問い合わせ」が63.7%と高い割合を占めています。接種に関する問い合わせでは、「ワクチンの予約でスタッフが電話から離れられない」「電話がつながらない、と怒気を含んだ言葉がつらい」などといった対応に苦慮する声もあります。
 ワクチン接種の課題としては、「医療機関での予約受付による混乱」が79.8%と最も多く、次いで「行政等による予約システムの混乱」が65.9%、「ワクチンのキャンセル対応」が62.6%、「ワクチンの供給体制と管理・保存」が51.2%となっています。ワクチン供給に関する情報が不足していることによる地方行政の混乱は、医療機関での混乱を招きます。医療機関への情報提供、ワクチン接種に関する地域住民への情報周知方法は円滑な接種を行うためにも今後改善が必要と考えられます(高齢者の場合、インターネットやスマートフォンを活用していない場合も多く、接種券の手紙だけを頼りにする場合があり、予約に至るまで時間のかかるケースも出ています)。
 また、予約を一括して引き受けているある自治体では、近隣の医院で個別接種を希望される傾向もあって、かかりつけ医ではなくても、過去に1 回かかったことがあるから、かかりつけとして接種予約をするケースもあります。結果的に、本当にかかりつけの方がその医療機関の接種予約枠から漏れてしまうケースもでています。その他、ワクチンは1 バイアルを6 人分に分けて使用するため人数確保が必要であり、キャンセル時の対応も改善が必要な点となっています。

【調査結果】 

設問1:新型コロナウイルスワクチン接種を実施しますか、または既に実施していますか?

(1)実施する、または既に実施している
(2)実施しない

(1)実施する(2)実施しない
医科診療所83.0%17.0%
病院100.0%0.0%
全体84.6%15.4%

※「(1)実施する、または既に実施している」場合の、個別接種・集団接種の実施状況

個別接種集団接種
医科診療所88.9%58.4%
病院95.8%62.5%
全体89.7%58.9%

設問2:新型コロナウイルスワクチン接種に関して、患者等から電話等での問い合わせがありますか?

(1)ある
(2)ない

(1)ある(2)ない
医科診療所80.6%19.4%
病院95.7%4.3%
全体82.0%18.0%

※「(1)ある」場合の、1 日平均の問い合わせ件数

1~10 件11~19 件20 件以上不明
医科診療所79.8%6.7%13.5%
病院47.1%0%47.1%5.8%
全体75.7%5.9%17.6%0.8%

※「(1)ある」場合の、1 日の問い合わせ件数(最大)

1~10 件11~19 件20~99 件100 件以上
医科診療所57.6%4.0%30.4%8.0%
病院22.0%6.0%44.0%28.0%
全体53.1%4.2%32.2%10.5%
・1 日の最大問い合わせ件数は、100~200 件が10 医療機関、200 件以上が3 医療機関確認された。

設問3:患者等から電話等で問合せがある場合の内容(複数回答)

(1)ワクチン接種予約について
(2)接種後の副反応について
(3)かかりつけ医のいない患者から接種可能かどうかについて(※個別接種)
(4)予約後のキャンセルについて
(5)その他

(1)ワクチン接種予約(2)接種後の副反応(3)かかりつけ医のいない患者(4)予約後のキャンセル(5)その他
医科診療所92.7%39.1%63.7%36.3%25.1%
病院100%52.1%60.8%43.4%26.1%
全体92.7%39.1%63.7%36.3%25.1%
  • その他の内容
    • 個別接種を実施しているか(4 件)
    • かかりつけ患者から、自身のワクチン接種可否について(20 件)
    • 旧予診票にもとづく、主治医に対する接種可否の確認(5 件)
    • 既往症のある方からのワクチン接種可否について
    • 妊娠中のワクチン接種可否について
    • かかりつけ患者から、家族の接種について
    • ワクチン接種予約日時の確認・変更(11 件)
    • ワクチン予約システムに関する苦情(8 件)
    • 接種券の紛失
    • キャンセル待ちの可否
    • ワクチン接種の効果について

設問4:個別接種に対応しない医療機関・その理由(複数回答)

(1)アナフィラキシーショック等の緊急時体制が確保できない
(2)接種後の控室が確保できない
(3)スタッフ不足
(4)副反応への対応不安
(5)V-SYS 等の接種情報入力に対応できない
(6)その他

(1)緊急時体制(2)接種後の控室(3)スタッフ不足(4)副反応(5)V-SYS等(6)その他
医科診療所68.5%57.4%75.9%48.1%31.4%27.7%
病院100%100%100%0%0%0%
全体69.1%58.2%76.4%47.3%30.9%27.2%
  • その他の内容
    • 行政等からワクチン個別接種の要請がない(2 件)
    • 地区医師会が集団接種を中心にしているため
    • 当院は小児科であり、高齢者や成人の接種は不向きと考える(2 件)
    • 当院での受け入れ体制が不十分なため
    • 予約電話の対応を行うことで、日常診療に影響がでる(2 件)
    • 日常診療が多忙で対応できない
    • ワクチンの管理保存に不安を感じる
    • ワクチン接種は「1 瓶あたり6 人」という人数確保が必要だが、予定がたたないため

設問5:新型コロナウイルスワクチン接種の課題(複数回答)

(1)医療機関への電話や来院によるワクチン予約受付の混乱
(2)行政等による予約システムの混乱
(3)ワクチンの供給体制と管理・保存について
(4)副反応への対応
(5)キャンセル対応
(6)その他

(1)予約受付による混乱(2)行政等による予約システムの混乱(3)ワクチンの供給体制と管理・保存(4)副反応への対応(5)キャンセル対応(6)その他
医科診療所77.6%66.8%54.7%42.1%62.6%16.4%
病院100%58.3%20.8%33.3%62.5%12.5%
全体79.8%65.9%51.2%41.2%62.6%15.9%
  • その他の内容
    • ワクチンを1 バイアル6 人分に分けることが大変(3 件)
    • 新型コロナウイルスワクチンは1 回目と2 回目の接種間隔が20 日程度とされているが、2 回目接種の予約にしっかり対応できるか〔2 回目のワクチンキャンセルに対応できない〕不安(3 件)
    • ワクチン接種を行うことによる日常診療の混乱
    • ワクチン供給の情報不足による地方行政の混乱。そのため、医療機関に協力依頼が出来ず、突然の供給で予定を合わせるのが大変(2 件)
    • ワクチン接種のための人員確保、ワクチン対応に関わる医療現場の疲弊、日常診療との両立など、個別接種医療機関にかかる負担が大きい(6 件)
    • 接種情報の入力に関して、複数のシステム(V-SYS、VRS、市の予約システム)に情報入力するため、重複した情報を入力するなど業務が増える(4 件)
    • 集団接種への協力は負担が重い
    • 在宅クリニックの為、希釈時間内での訪問スケジュールを組むのがとても難しい
    • クラスター発生の事業所等にワクチン接種を急いでほしい
    • 高齢者の方がPC やスマートフォンをもっていないため、情報が不足している
    • 同じ市内でも近隣で予約がとれず、20 ㎞以上離れたところまで予約を取りに来る。市で予約を割り振っているが、もっと近くで予約がとれないものか
    • 「かかりつけ医の意味がない」「私のことを見捨てるのか」「電話がつながらないのはどういうことだ」と怒気を含んだ言葉がつらい。苦情を言うために来院する方もいる
    • ワクチンの予約でスタッフも一日中電話から離れられない。予約枠を無限に増やすことは出来ないことを話しても理解してもらうことは困難。ワクチン業務は通常診療への影響が大きい