声明:保険証“原則廃止”、オンライン資格確認等システム“原則義務化”の方針に抗議します

2022 年 7 月 5 日

内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
総務大臣 金子 恭之 殿
厚生労働大臣 後藤 茂之 殿
デジタル大臣 牧島 かれん 殿

一般社団法人茨城県保険医協会
会 長   高 橋  秀 夫

声    明

保険証“原則廃止”、オンライン資格確認等システム“原則義務化”の方針に抗議します

 厚生労働省は5 月25 日に開催された社会保障審議会医療保険部会で、2024 年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制導入、さらには保険証の原則廃止を目指すこと、2023年4 月から保険医療機関でオンライン資格確認等システム導入原則義務化を目指す方針を明らかにしました。また、6 月7 日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」においても、マイナンバーカードの保険証利用促進と保険証の原則廃止を目指すとしています。

 政府はマイナンバーカードを保険証の代わりとして利用することを推進しようとしていますが、マイナンバーカードの交付率は国民の5 割弱であり、このうち保険証として利用登録をした人は約16%に留まっています。また、医療機関でのオンライン資格確認等システム運用開始施設は約19%に留まります。

 これらの普及が進まない背景は、国民や医療現場の理解を得らえていないことが最大の要因です。「医療のデジタル化」は避けては通れない道ですが、デジタル化を急ぐのではなく、まずは国民や医療機関の声を真摯に受け止め、様々な不安を解消するための政策見直しが重要です。

 具体的には、マイナンバーカードの保険証利用により、マイナポータルに集められた医療情報の閲覧が可能となりますが、マイナポータルの利用規約では、情報漏洩などのトラブルの責任は「システム利用者の自己責任」とされています。患者プライバシーに関わるトラブルは全て自己責任とされているのです。また、マイナンバーカードの取得は“任意”ですが、保険証の原則廃止はマイナンバーカードを実質的に保険証として利用することを意味するものと考えられ、特に医療機関にかかることの多い高齢者は、このことにより保険診療を受けにくくなることも想定されます。国民が求めているのは、マイナンバーカードと健康保険証の紐付けによるポイント取得ではなく、その仕組みの“有用性と信頼性”です。

 医療機関においてはオンライン資格確認等システムの導入により、常時回線接続することでサイバー攻撃のリスクが高まります。近年、医療機関へのサイバー攻撃は増加傾向にあり、ランサムウェアによる被害などが次々に報告されています。しかし、患者の機密情報を扱う医療機関のセキュリティ強化やシステム保守などランニングコストについて国からの支援はありません。患者プライバシーを守ることは重要な課題です。また、仮に多くの医療機関がオンライン資格確認等システムを活用した場合、スムーズに運用が進むのかどうか、検証するチェック機構も存在しません。チェック機構の導入が必要ではないでしょうか。

 これらの点について政策の見直しを行う必要があり、保険証の原則廃止、オンライン資格確認等システムの導入原則義務化の方針に対して強く抗議します。

以上