<医・歯>後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養の取扱いについて

参考:長期収載品の選定療養に係る詳細・疑義解釈等「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」(厚労省)をご確認ください。


10月1日より、「長期収載品の選定療養」の仕組みが導入されます。概要についてまとめましたので、ご確認ください。

※9月27日 追記:9月25日の厚労省事務連絡により、注射の薬剤は選定療養の対象から外されたことを反映。事務連絡については、最下段参照。

<主なポイント>

① 投薬、 注射 、 (※) 在宅に係る薬剤について、患者希望で長期収載品を選択した場合は、選定療養の対象となる。
② ①に該当した場合は、患者から特別の料金の徴収が必要となる。(院外処方の場合は調剤薬局で特別の料金を徴収する。)
③ 医師の判断で長期収載品を選択した場合は、これまで通り保険給付の対象となる。
④ ③の場合、医師が長期収載品を選択した理由をレセプトコードから選択する。
⑤ 長期収載品に係る選定療養の趣旨と特別の料金について院内掲示をする。

※ 9月25日の厚労省事務連絡により、注射の薬剤は選定療養の対象から外された。
 

1.長期収載品の選定療養とは

対象となる長期収載品(※後述の「2.」に該当する医薬品)を「患者の希望」により処方した場合、「長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1を選定療養として徴収する」という仕組みで、2024年10月1日から導入される。

当該仕組みに該当する場合、医療機関では、院内処方の場合に患者一部負担金とは別に「特別の料金」を徴収する。(院外処方の場合は、調剤薬局で「特別の料金」を徴収する。)なお、処方料や処方箋料の点数は変更ない。

▼3割負担の場合の自己負担のイメージ:長期収載品を処方した場合、これまで150円だった患者負担が190円になる。

2.対象となる医薬品

対象となる医薬品は、以下の(1)(2)(3)のすべてを満たす長期収載品とされている。

(1) 後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる「準先発品」を含む)(バイオ医薬品を除く)
(2) ①後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過した品目(後発品置換え率が1%未満のものは除く)または ②後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過しない品目のうち、後発品置換え率が50%以上
(3) 長期収載品の薬価が、後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価を超えている
  ※薬価の比較は、組成、規格及び剤形ごとに判断する

実際に上記に該当する長期収載品は1095品目で、厚生労働省のホームページに、【 対象医薬品リスト 】として公表されている。

また、選定療養の対象となるのは、これら対象となる長期収載品を「レセプトの『14 在宅』欄、『20 投薬』欄 、『30 注射』欄 (※) で算定する場合」である。そのため、「40 処置」欄や「50 手術」欄等で算定する医薬品は、これまで通り保険適用となる。

※ 9月25日の厚労省事務連絡により、注射の薬剤は選定療養の対象から外された。

3.選定療養となる場合の取扱いと院内掲示

(院外処方・院内処方共通)
⑴ 「患者の希望(患者の自由な選択と同意があった場合に限る)」により、上記「2.」の長期収載品を院外処方又は院内処方した場合に選定療養の対象となる。(入院中の患者は選定療養の対象外)

(院外処方の場合)
⑵ 上記⑴に該当する場合は、処方箋に長期収載品の銘柄名を記載し、併せて、「患者希望」欄に「✓」又は「×」を医薬品ごとに記載する。※<参考1>参照

(院内処方の場合)
⑶ 上記⑴に該当する場合は、患者一部負担金とは別に「特別の料金」を徴収する。計算事例や解説は、厚労省事務連絡選定療養における費用の計算方法についてを参照されたい。
(4) レセプトの「摘要」欄には、当該医薬品名の後に「(選)」を記載し、所定単位につき、選定療養に係る額を除いた薬価を用いて算出した点数を記載する。  

〔記載例〕
  ●●●錠(選)  1錠
  △△△錠     1錠 17×5

(5) 長期収載品に係る選定療養の趣旨及び特別の料金について、院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすく掲示する必要がある。また、原則としてウェブサイトにも掲載しなければならない。(自ら管理するホームページ等を有しない医療機関は不要。)ウェブサイトへの掲載については、令和7年5月31日までの間、経過措置が設けられている。※<参考2>参照
(6) 選定療養に係る自己負担と消費税、それ以外の医療費を明確に区分した領収書を交付する。

4.選定療養とならない場合とその取扱い

(院外処方・院内処方共通)
(1) 上記「2.」の医薬品を処方等する場合であっても、以下①~⑤のいずれかに該当する場合は、選定療養の対象とならず、従来通り保険適用となる。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合で、長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師が判断する場合。
② 後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師が判断する場合で、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合。
④ 後発品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合。(単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。)
⑤ 後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難な場合。

(2) 上記(1)に該当し、保険適用とする場合は、レセプトの摘要欄に、以下のいずれかを選択する。

レセプトコード左記コードによるレセプト表示文言
820101320長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異があるため
820101321患者が後発医薬品を使用した際、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、長期収載品との間で治療効果に差異があったため
820101322学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されているため
820101323剤形上の違いにより、長期収載品を処方等の必要があるため
820101324発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難なため

(院外処方の場合)
 (3) 上記(1)に該当する場合は、処方箋に長期収載品の銘柄名を記載し、「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」を医薬品ごとに記載する。また、「保険医署名」欄に署名又は記名・押印する。※<参考1>参照

<参考1> 処方箋の新様式

<参考2> 院内掲示例

重要なお知らせ

2024 年度の診療報酬改定により、患者さま希望による先発医薬品は、2024年10月から『特別料金(選定療養費)』が設定されます。


特別料金(選定療養費)について

要件にあった先発医薬品において、後発医薬品との差額の一部を選定療養費として患者さまが自己負担する仕組みが、2024 年10 月よりスタートいたします。

  • 予め定められた後発医薬品のある先発医薬品が対象です。
  • 医療上必要と判断され処方・調剤された先発医薬品は対象外です。(※患者さまのご事情で先発医薬品を希望される場合はご相談ください。)
  • 薬局での在庫不足等、やむを得ず先発医薬品を調剤する場合は対象外です。
  • 選定療養費の計算額は、先発医薬品と後発医薬品(最高価格帯)の差額のうち、4分の1相当です。
  • 選定療養費は課税対象のため、消費税が上乗せされます。 ・公費負担等の自己負担がない患者さまも対象となります。

<参考3> 医療機関対応フロー

※ 9月25日の厚労省事務連絡により、注射の薬剤は選定療養の対象から外された。

令和6年9月25日 厚労省事務連絡・一部改変

問1 既出の通知(※1)において、「医科在宅の項(C200)に掲げる薬剤」、「医科注射の項(G100)に掲げる薬剤」及び「歯科注射の項(G100)に掲げる薬剤」が選定療養の対象となるとされているが、入院中の患者以外の患者(往診又は訪問診療を行った患者も含む)に対して医療機関が注射を行った場合も、長期収載品の選定療養の対象となるのか。

(答) 長期収載品の選定療養の対象とはならない。
なお、在宅自己注射を処方した場合については、「疑義解釈その1」(※2)に記載するとおり、長期収載品の選定療養の対象となる。

※1「『療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等』及び『保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等』の実施上の留意事項について」の一部改正について(令和6年3月27日保医発0327 第10号)

※2 長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)(令和6年7月12日厚労省事務連絡)