「オンライン資格確認」・「マイナ保険証利用」に伴う医療機関でのトラブル調査結果
~窓口トラブルは減少せずに12月の保険証廃止を迎える~
(※過去4回の調査結果まとめ)
この度、2023年5月から2024年8月にかけて、4回にわたり調査を行った「医療機関でのマイナ保険証トラブル調査」の結果を報告します。この間、国によるマイナンバー情報の総点検が行われましたが、現在も医療機関でのマイナ保険証利用によるトラブルは解決していないことが、本調査より明からとなっています。
2024年12月1日、健康保険証の新規発行は停止され、医療機関を受診する際は、原則、マイナンバーカード(※マイナ保険証)による受診が求められます。今後、医療機関窓口では、「健康保険証」・「マイナ保険証」・「資格確認書」など、様々な資格確認書が提示されることになります。医療機関窓口では、このことに関する説明を患者側から求められたり、トラブル時の対応等が煩雑になることが想定されます。本調査では、「健康保険証廃止後は受付業務に忙殺される」と回答した医療機関が直近で6割を超える結果となっています。
一方、マイナ保険証の利用に目を向けると、2024年8月時点で利用率は12.43%と低迷しています。患者側がマイナ保険証の利用にメリットを感じているのであれば、マイナ保険証利用率は増加するはずですが、利用率は低迷しています。このことからもマイナ保険証の利用に関して患者側が不安を抱えていることは十分に推察できるところです。
国民皆保険制度が機能不全に陥らない為にも、当面の間、現行の健康保険証とマイナ保険証の両立が必要と考えます。
以下、調査結果を報告します。
【調査方法】
● 調査実施期間と回答率
- 第1回:2023 年5 月(送付件数:1,556 件 回答数:242 件)➞ 回答率15.56%
- 第2回:2023 年6 月(送付件数1,561 件 回答数:299 件)➞ 回答率19.15%
- 第3回:2024 年1 月(送付件数:1,572 件 回答数:334 件)➞ 回答率21.25%
- 第4回:2024 年8 月(送付件数:1,570 件 回答数:370 件)➞ 回答率23.57%
● 実施方法:茨城県保険医協会・会員医療機関にFAXで調査票を送付(※FAXがつながる医療機関のみ調査票を送付)
【調査結果】
(Ⅰ)各回調査時点での医療機関におけるマイナ保険証、オンライン資格確認に関するトラブル「有」の割合
第1回(2023/5) | 58.16%(114/196) |
第2回(2023/6) | 64.26%(169/263) |
第3回(2024/1) | 63.84%(196/307) |
第4回(2024/8) | 76.00%(266/350) |
< 県内医療機関直近のトラブルは7割超 >

※マイナ保険証の利用率(厚生労働省データより)
2023年5月:6.01% | → | ・マイナ保険証利用率の増加とともに、医療機関でのマイナ保険証、オンライン資格確認によるトラブルの割合も上昇。 ・現状のままマイナ保険証の利用者数が増えると、医療機関窓口は混乱をきたす可能性が高い。 |
2023年6月:5.58% | ||
2024年1月:4.60% | ||
2024年8月:12.43% |
(Ⅱ-1)トラブル「有」と回答した医療機関・トラブルの類型とその割合について(複数回答)
トラブルの類型 | 第1回調査 | 第2回調査 | 第3回調査 | 第4回調査 | |
① | 該当の被保険者番号がない | - | 33.67% (66/196) | 24.81% (66/266) | |
② | 資格情報の無効がある | 64.91% (74/114) | 71.6% (121/169) | 47.96% (94/196) | 56.02% (149/266) |
③ | 名前や住所の間違い | - | - | 27.55% (54/196) | 20.3% (54/266) |
④ | 名前や住所で●が表記される | - | - | 80.61% (158/196) | 80.45% (214/266) |
⑤ | 負担割合の齟齬 (国保) | - | - | 4.59% (9/196) | 5.26% (14/266) |
⑥ | 負担割合の齟齬 (社保) | - | - | 2.04% (4/196) | 1.5% (4/266) |
⑦ | 負担割合の齟齬 (後期高齢) | - | - | 9.18% (18/196) | 6.39% (17/266) |
⑧ | 限度額認定に誤り等がある | - | - | 8.16% (16/196) | 6.02% (16/266) |
⑨ | 他人の情報が紐付け | 8.77% (10/114) | 2.37% (4/169) | 2.04% (4/196) | 1.88% (5/266) |
⑩ | カードリーダーの 接続不良・認証エラー | 35.96% (41/114) | 73.37% (124/169) | 35.2% (69/196) | 46.24% (123/266) |
⑪ | マイナ保険証の期限切れ | - | - | - | 18.42% (49/266) |
- ②の「資格情報の無効」については、データ登録に誤りがある場合や転職等による医療保険の資格変更が反映されていない場合に表示される。昨年の第1 回調査時より、トラブル割合は高止まりしている。
- 第3回調査から確認を始めた、④の「名前や住所で●が表記される」もかなり高い割合で起きている。
- ⑨の「他人の情報が紐付け」については、国の総点検もあり、トラブルの割合は減少してきている。しかし、被保険者情報は一人たりとも誤りがあってはならない情報。他人情報の紐付けは、間違った処方など医療過誤・医療事故につながる可能性あり。
- ⑩の「カードリーダーの接続不良・認証エラー」は3~4割の医療機関でトラブルが続いている。通信回線の不具合やサーバーダウンなどが考えられるが、このようなことが起きれば、マイナ保険証による受付が不可能となる。
- ⑪の「マイナ保険証の期限切れ」は、マイナンバーカードに書き込まれた電子証明書の有効期限が5年であるため、有効期限を過ぎたカードを医療機関に持参しても健康保険証としては活用できない。
(Ⅱ-2)トラブルの具体的内容(※2024年8月の第4回調査より抜粋)
- 保険資格の変更が2ヶ月前に行われているのに、反映されていなかった。
- 「保険証が変わりました」と患者さんに言われたが、新しい保険情報が反映されていなかった。
- マイナ保険証を機械に通した際、「該当なし」と出てしまう。社会保険、国保の市町村に問い合わせをしたところ、「該当している」というケースが多い。
- 患者さんは保険証の原本を持っているが、顔認証付きカードリーダーで確認すると「資格情報なし」と表示される。
- 資格情報が無効となるケースが1番多い(問い合わせると有効であることが多い)。患者さんからのクレームもあり。個人情報が全くひも付いていないケースもあった。
- 配偶者のマイナンバーの住所が夫の単身赴任先の住所になっている
- マイナ保険証のデータとマル福に記載されている住所が異なる。
- 保険証の資格情報が無効・氏名の一部が●で出る。
- 旧字体が●で表示される部分は改善して欲しい。
- レセコンが旧字に対応していないため、旧字体が●表示となる。それを修正すると「差異あり」になってしまう。
- ●の出現率が多すぎます。難しい字ならともかく、「樹」とか。茨城県も「●城県」と住所に出ます。
- 顔認証ですが、ご高齢の方がNGになったりします。暗証番号も分からない方も多いです。
- 顔認証が1回もOKにならない患者がいた。
- マイナ保険証が読みとれない。
- 保険証の有効期限が表示されない。
- マイナ保険証と健康保険証、負担割合の相違。
- 保険証が月の途中で変更(例:社保➞国保)となった場合、保険証の適用開始日が間違っている。
- 初診で診察券のない患者様が、マイナンバーの受付だけ行って待っていた為気付かず、カルテが用意できず待たせてしまった。
- 発熱外来で院内に案内できない方の受付ができない。
- 資格確認用のPCが、接続エラー、端末エラー等で情報を見ることができなかった。それが30分以上続いたため、マイナカードしか持参していない人の情報が全くわからず対応に困った。
- 電子証明書の期限切れでマイナンバー使用できず。電子証明の期限記載がなかったので患者さんへの説明に時間がかかった(納得してもらうのに)。
- マイナンバーカードのICチップ破損で読み取りできず。
- 資格確認用のPCがすぐ不具合をおこす。
- 資格確認用のPCが故障し、2日間使用できなかった。
- 雷による停電で、使用出来なくなった。
- 資格確認時の暗証番号を忘れ、顔認証が出来ずクレームがでるケースがある。
(Ⅲ)トラブルの際どのように対応したか(複数回答)
第2回調査 | 第3回調査 | 第4回調査 | |
その日に持ち合わせていた 健康保険証で資格確認した | 78.7% (133/169) | 81.12% (159/196) | 80.45% (214/266) |
オンライン資格確認のコールセンターや 保険者に連絡して相談した | 31.95% (54/169) | 22.45% (44/196) | 18.05% (48/266) |
レセコンメーカーに相談した | (43/169) 12.24% | 25.44% (24/196) | 15.79% (42/266) |
前回来院時の情報をもとに対応した | 18.34% (31/169) | 41.33% (81/196) | 43.61% (116/266) |
トラブル後の混乱回避は約8が「健康保険証」で確認
・マイナ保険証、オンライン資格確認に関するトラブル発生時には、多くの医療機関が持ち合わせていた「健康保険証」により資格確認を行い、トラブルを回避している。
(Ⅳ)トラブル対応で、「一旦10割負担を患者に請求した」事例
第3回調査 | 第4回調査 | |
あった | 17医療機関 (少なくとも31事例) | 32医療機関 (少なくとも60事例) |
なかった | 260医療機関 | 273医療機関 |
・マイナ保険証、オンライン資格確認に関するトラブルにより、結果的に被保険者資格の確認ができない場合、一旦10 割請求をするケースが考えられる。この時「被保険者資格申立書」という書面に、患者が自身の被保険者情報を記載することで保険診療を受けることができる。
しかしながら、「被保険者申立書」に詳細な情報記載することは、患者側からすると面倒、手間が増えるという意見もある。
(Ⅴ)今年12月2日で健康保険証が廃止された場合の受付業務について(複数回答)
第3回調査 | 第4回調査 | |
大きな混乱はないと思う | 15.87% (53/334) | 12.97% (48/370) |
今も混乱しており、廃止後は受付業務に 忙殺されると思う | 54.49% (182/334) | 61.35% (227/370) |
診察の待ち時間が長くなると思う | 38.62% (129/334) | 42.70% (158/370) |
スタッフを増やして対応せざるを得ないと思う | 20.96% (70/334) | 20% (74/370) |

(Ⅵ)12月2日の健康保険証廃止について
第3回調査 | 第4回調査 | |
賛成 | 3.89% (13/334) | 5.41% (20/370) |
延期すべき | 14.37% (48/334) | 20% (74/370) |
保険証は残すべき | 81.14% (271/334) | 76.62% (282/370) |

【資料】マイナンバーカードの円滑な取得および福祉施設等における管理について
(総務省:R6・5・31)より抜粋

<参考>健康保険証廃止に関する県民の声
茨城県保険医協会では、保団連が主体となって企画した「クイズで考える私たちの医療」に取り組んだ。
これは現行保険証の必要性を考えるためのクイズハガキであり、そこに寄せられた県民の声を抜粋して紹介する。
- 紙の保険証もあった方が安心できる。
- 保険証が廃止されると高齢者としては心配ばかりです。マイナカードは家に保管していて持ち歩くクセが身についていない。
- マイナカードを持っていても保険証として使うことがほとんどありません。住民票や印鑑証明などコンビニで取得出来る事くらいしか便利さを感じていない現状。今まで通りの保険証でいいのでは?と思います。
- マイナンバーカードでの保険証登録はまだ完全ではないので、いきなりすべてを廃止するのは、控えてほしいと思います。
- 色々なトラブルもあり、本年12月に廃止するには問題が多すぎる。
- 先生方が治療に専念できるように、役人の都合による事務や経費の負担を増やさないでください。
- 5年ごとの更新が必要な事は知りませんでした。
- マイナ保険証の更新手続き5年ごとですが、若いうちはさほど問題ないでしょうが、高齢になると更新手続きに行くことすら困難になります。現在の保険証のように送られてくるのはありがたいことです。
- マイナ保険証の5年ごとに更新手続き。車の免許証更新で手続きをしておけば通知ハガキが届きます。シルバー世代では〝5年″を忘れてしまう。通知が無いと心配です。
- 暗証番号をかきとめている。この年齢になると忘れてしまうから。機械も使えない。高齢者だけでも猶予の期間をいただきたい。
- 保険証・お薬・住所など大切なデータが一つにまとまってしまうため不安ですし、更新が大変です。コンビニで住民票が発行出来るなど、行政書類の印刷用に使えるだけで十分。保険証は就業状況が分かる重要なもの。なくさないで!!
- 母が認知症対応型の施設に入っています。施設には保険証を預けていますが、さすがにマイナンバーカードを保険証として預けることには抵抗があります。
- これ迄、病院、薬局にて保険証の提出は求められますが、マイナカードを求められたことは一度たりともありません。介護や医療に優しい国家であるなら高齢者に面倒は押し付けないはずです。何をそんなにこだわっているのでしょう?現保険証を無くさないといけない何か特別な理由があるのでしょうか?登録さえまともに出来ない政府の何を信じろと言うのでしょう。
- 弟が障害者です。マイナンバーカードを本人が使えない場合、どんどんとりのこされてしまいます。将来が不安です。
- マイナンバーのシステムが確実なものになってから、保険証の撤廃をしてください。
- マイナ保険証に統一するのであれば、階段を踏んで進める必要がある。高齢者が自分で更新できるようシンプルにしてほしい。
- いずれは統一すべきですが、マイナンバーカードの普及を待つべき。
- マイナカード推進した方がいいと思う。
- 入院中、寝たきり、精神疾患のある方は、マイナ申請をどの様にやるのか、国ははっきり伝えてほしい。
- 中途半端ではなく保険証をなくすなら思いきってほしい。