高額療養費制度負担上限額の引き上げに関する緊急声明を発出しました
内閣総理大臣 石破 茂 殿
財 務 大臣 加藤 勝信 殿
厚生労働大臣 福岡 資麿 殿
一般社団法人 茨城県保険医協会
会 長 高 橋 秀 夫
【緊急声明】高額療養費制度負担上限額の引き上げ方針は白紙撤回を
患者の一部負担金に限度額を定める“高額療養費制度の負担上限額引き上げ”をめぐり、福岡資麿厚生労働大臣は2月14日、患者団体との懇談等を実施し、制度案のうち長期的に治療を続ける患者(多数回該当部分)については、いまの上限額を据え置くことを公表した。2月17日の衆院予算委員会では、石破茂総理が「年4回以上該当される方の自己負担額の見直しを凍結し、据え置くことを政府として決断した」と表明している。その一方、高額療養費制度全体の見直しについて「凍結は行わない」と表明した。
2024年11月28日に行われた第187回社会保障審議会医療保険部会提出資料に、「高額療養費の支給実績(令和3年度)」がある。当該資料では、高額療養費の支給件数と多数回該当件数が示されており、多数回該当は全体の約14%(※協会けんぽ、組合健保、市町村国保の実績から算出)に過ぎず、7割を超える高額療養費制度利用者が影響を受けることになる。さらに、制度全体の見直しが行われた場合、ひと月あたりの負担上限額が引き上げられ、年収区分によっては2027年8月を目途に最大70%を超える負担上限額の引き上げが行われるため、現行の制度であれば多数回該当対象となる患者であっても、今後は負担上限に届かず、対象から外れる可能性が生じる。制度全体の見直しを行うことで、多くの高額療養費制度利用者が影響を受けることは明白である。
高額療養費制度は医療費の自己負担が過重なものとならないよう、高額医療を受けた際に患者自己負担を一定額に抑えるものであり、国民皆保険制度を支える大変重要な仕組みとなっている。まさに患者の命綱である。
日本の医療費は増加傾向であり、財政がひっ迫する中で医療費全体の見直しを検討していくことは必要である。しかし、高額療養費の支給金額は国民医療費の約6%(令和3年度国民医療費:約45.3兆円、令和3年度高額医療費の支給金額:約2.8兆円)であり、高額療養費が財政ひっ迫の主要因とは言い難い。
制度全体の見直しを行えば、受診抑制や症状悪化が懸念される。患者が命に関わる治療を諦めることのないよう、真に、患者に寄り添った解決策を求める。
命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、高額療養費制度負担上限額の引き上げ方針は白紙撤回を求める。
以上