4月27日:新型コロナウイルスの影響に伴う医療機関の風評被害に関する緊急アンケート調査結果


新型コロナウイルス感染が県内でも広まる中、一般医療機関は地域医療を支え続けています。そのような中、当会に属する医療機関において、事実とは異なる情報により風評被害を受けた医療機関が発生しました。今回その実態を調査するためアンケート調査を行いました。

調査から、

  • 新型コロナウイルスの影響に伴う医療機関への風評被害、県内42 医療機関が「風評被害があった」と回答。風評被害に伴う患者減もあり。
  • 風評被害の多くは、その医療機関で新型コロナウイルス患者が発生していないにもかかわらず、患者が発生したとの噂が原因となっている。
  • 医療機関の従業員や家族に対する心無い発言も確認されている。

ことなどが確認されました。

一般医療機関は、患者減少による今後の経営不安、感染に対する不安、慢性的な医療資材不足を抱えながらも地域医療を支えるため診療を継続しています。地域住民の方々、医療機関を受診される方々から広がる情報は近隣に大きな影響を及ぼします。「不確かな情報に基づく行動は行わない」、「心配な場合は、その情報が正確かどうか確かめる」ことが必要です。

【調査方法】

 実施期間: 2020年 4月 17日(金)~ 4月 22日(水)
 実施方法: 当会所属の会員医療機関宛にFAXで調査用紙を送信。
  ※FAX送信数:医科診療所(796件)、病院(102件)の合計898医療機関に送信。

 回答数:医科診療所: 796医療機関中 263医療機関が回答(回答率:33%)
     病   院: 102医療機関中 22医療機関が回答(回答率:22%)
     全   体: 898医療機関中 285医療機関が回答(回答率:32%)

【調査結果】

設問1:新型コロナウイルスの影響に伴う医療機関への風評被害はあったか。

(1)あった
(2)なかった

(1)あった(2)なかった
医科診療所35 件(13.3%)228 件(86.7%)
病院7 件(31.8%)15 件(68.2)
全体42 件(14.7%)243 件(85.3%)
  • アンケートに回答した医療機関285 件のうち、新型コロナウイルスの影響に伴う医療機関への風評被害があったと回答した医療機関は 42件 あった(回答した医療機関の約15%で風評被害有り)。

設問2:設問1で「(1)風評被害があった」とお答え頂いた場合、その内容は。

診療所(回答抜粋)

〔医療機関に対する内容〕

  • 医院に行くと、コロナウイルスにかかるといわれた。
  • 当院からコロナ患者が出たという風評。
  • 病院に行くと新型コロナ感染症にかかるという漠然とした噂がある。
  • “一般クリニックが最もあぶない”という週刊誌の記事を読んで、薬のみ希望する患者が増えている。
  • 当院からコロナ患者が発生して、しばらく休診になるとの風評で患者が減少。
  • 某医療機関に入院していた高齢患者が退院翌日に発熱のため当院受診。胸部XP で右上肺部に浸潤陰影、再入院となった。元々入院していた病院では院内感染が起こっていた時期なのでコロナ感染と決めつけられ、診療所近辺で話題に。
  • 「〇〇市内で最初に陽性となった患者はそちらに救急車で運ばれたのでしょう?そちらの医院は危険なのでしょう?」とTEL で患者さんから言われた。当院ではコロナ陽性は出ていないと伝えたが、電話をしてきた患者さんの周辺ではそのようなうわさになっている。
  • 疑い患者を診察した後「先生のところでコロナの人を診察していたから行くとあぶない」と近所の人がいっていたが本当か、と電話で問い合わせがあった。
  • 当院で新型コロナウイルス肺炎が発生し、保健所の消毒指導があったとの噂が出た。近隣にコロナ患者を受け入れている病院があるので、そういう噂がたったのか。
  • 当クリニック付近で防護服を着て何かまいているのを見たので来院するのが怖かったと患者にいわれた。
  • 新型コロナウイルス疑いの患者を保健所にPCR 検査依頼することがあり、本院で新型コロナウイルスの患者が出たとデマを流された。
  • 報道された感染者情報に対しての問い合わせ。患者の通勤利用駅、受診したのが通勤駅近所の診療所と書かれていたことなどを総合して、当院で感染者が出たと思った人がいる。

〔医療機関の職員に対する内容〕

  • 職員の家族が、「奥さんは医療関係者だから、新型コロナウイルスを持って帰ってくるのでは」と言われている。
  • 従業員(看護師)のお子さんが「あの子のお母さんは病院勤務だから遊んではいけない」「看護師のお子さんは騒ぎが収まるまで学校に通わせるべきではない」などといわれた。
  • 当院医師の一人が、コロナ患者受け入れ病院でも勤務しているため「あぶない」「こわい」等、患者間で話が広まっている。

病院(回答抜粋)

〔医療機関に対する内容〕

  • 新型コロナウイルス患者の受け入れ等について様々なデマが流れた。患者の減少や採用活動にも大きく影響があった。
  • 当院で新型コロナ患者を受け入れている等の噂が近隣で広まり、外来数の減少につながってしまっている。
  • 当院で「コロナが発生した」とのデマが広がり、外来患者が激減した。
  • 当院でコロナ感染者が出たと、ツイッターでつぶやいている方がいて、昼夜問わず問い合わせが多数あった。

設問3:設問1で「(1)風評被害があった」とお答え頂いた場合、来院する患者数に変化はあったか。

(1)患者が減少した〔約  %〕
(2)変化なし
(3)その他

(1)減少した(2)変化なし(3)その他
医科診療所30/35 件(約86%)1/35 件(約3%)4/35 件(約11%)
病院6/7 件(約86%)0/7 件1/7 件(約14%)
全体36/42 件(約86%)1/42 件(約2%)5/42 件(約12%)
※分母は設問1で「風評被害があった」と回答した件数

【風評被害があったことによる患者減少率】

減少率
医科診療所約35%
病院約32%
全体約34%
  • アンケート調査では、「風評被害がなくとも患者は減った」「患者がコロナ感染を恐れて来院しないのでは」という、“風評被害かどうかわからないが患者減少が起きている”と回答する医療機関が、医科診療所で22 件、病院で1 件あった。そのような医療機関の患者減少率も加えると、全体では59 件の医療機関で患者減少が起こっており、患者減少率は約36%となった。本アンケート調査では、「風評被害による患者減少」を中心に確認したため、新型コロナウイルスの全般的な影響に伴う患者減少の全容はつかめないが、本調査では確認できなかった潜在的な患者減少も多数あるものと想定される。
  • 医科診療所で「患者が減少した」と回答(※風評被害があるかどうかに関わらず)した52 医療機関のうち、主に内科を標榜する医療機関が36 件と多数を占めた。一般内科には心臓病や糖尿病などをはじめとする、慢性疾患を持っている患者が数多くかかります。今回の調査では、「定期受診せず、予定していた検査が出来なかった」、「定期処方薬が切れてから来院する患者が増えた」といったコメントが見受けられました。慢性疾患患者の受診控えは、その疾患自体の症状悪化につながる可能性があります。その他、整形外科等ではリハビリ等の中断でADL の低下も懸念されるところです。

「新型コロナウイルスの影響について、今、困っていること」(回答抜粋)

【患者減少に関する内容】

  • 患者がコロナを恐れて来院しない。予約日前に電話の問い合わせが多発している。
  • 3 ヶ月分の定期処方希望が増えている。不安が強く、安定剤の希望者が増えた。感冒といって来院した時はかなり状態が悪い。
  • コロナウイルスの感染が怖いので、リハビリ通院を遠慮したいという患者が複数人いる。診療予約を先延ばしにする方が多い。
  • 当院に対する直接的なものではないが、一般的にコロナによる影響。「コロナにかかるのが嫌だから薬だけ欲しい」「待たすな」という患者がいる。患者数は明らかに減少している。
  • 発熱してもすぐには受診せず様子をみるようにという公的な指導が行き届いたせいか、あるいは受診すると感染することを恐れてかわからないが、風評被害ではなくても、受診者が減少。経営上の不安は大きい。
  • 患者さんに理由を聞いてみると、コロナが怖い、マスクをしないと受診出来ない、高齢者は重症化するからという回答があった。
  • 訪問診療、訪問看護を断られる。
  • 患者減少につき、数ヶ月後の収入減が予想される。
  • 風評被害は今のところないが、患者さん激減し、今後の経営継続が心配。
  • 経営が成り立たなくなる。

【感染への不安に関する内容】

  • コロナウイルス感染によるクリニック診療停止への不安。
  • 来院した患者がコロナ陽性だとわかった場合、濃厚接触であっても、たとえそうでなくても、どう対処したらよいか?
  • 東京在住で茨城に出張で来た患者。38℃以上の発熱が4 日続き、倦怠感も強いので、保健所に連絡。近隣の医療機関で診てもらうようにいわれ来院。レントゲンで肺炎ではないことを確認したが、この対応でよかったのだろうか。患者がコロナ陽性の可能性もあるし、今後こういった患者を診察していくことに、私もスタッフも不安を感じている。
  • 動線分離など自施設では限界がある。
  • 風邪症状で検査依頼もできない可能性がある患者はどういう対応がベストなのか。
  • スタッフが感染対策で疲弊している。
  • 様々な感染予防策を検討しながら診療を行っている。患者数は少なくなったが、感染対策に費やす時間が増え、労力が多く疲弊。
  • 発熱患者が来院した場合の感染対策、帰宅された際の消毒など手間が増えている。感染者が出た場合など、職員の不安は大きい。
  • 職員のストレスが増大している。
  • 発熱、咳、鼻汁も含め、感染症状の人は全例コロナを疑って、入口別、診察室も一室として対応している。キャップや防護服、手袋、フェイスシールドは全例に必要なのか悩んでいる。
  • 感染の不安からスタッフが退職した。求人の応募者がほぼゼロになった。
  • 少しの待ち時間でもクレームが多くなっている(気持ちはわかるが)。
  • 疑い例は全例、個別室での待機、診療をしているが、個室の数も限られているため、疑い患者が殺到した場合対応が出来ない。仕方がないことではありますが、医療スタッフ側の感染を常に心配しております。
  • 保健所からの指示で来院する場合、前もって電話連絡をしてもらいたい。
  • 連絡無く来院し、診察室で発熱等コロナ感染かもと口にする。
  • 診療所の入口に「風邪症状の方は院内に入る前に連絡を」という貼り紙をしているが、それを見ずに入ってくる。ただの風邪だから自分は違うと言い張る。
  • コロナに対する認識が足りない患者が多い(マスクをしない、風邪かわからないが咳をする)。
  • 発熱患者のトリアージに苦慮。
  • 患者からの電話問い合わせが増大している。
  • 患者の中にはコロナ感染を過剰に心配する人がいて、コロナ感染ではないと診断しても納得してもらえない。
  • 医療機関というだけで、お弁当の配達も断られた。

【PCR 検査に関する内容】

  • 発熱患者に数回投薬して様子をみても治らない場合、PCR 検査への誘導がなかなかできない。
  • いわゆる風邪症状の患者さんの診療に苦慮している。PCR 検査をもっと積極的に行うべきです。
  • PCR 検査をしてほしいといわれる患者さんが多く、一人一人に説明するのに時間を要する。

【医療資材不足に関する内容】

  • マスク、消毒薬、手袋、ガウンの不足。
  • マスク不十分、防護服が手に入らない状態で診療に支障あり。
  • このままマスクの入荷がストップし続ければ5 月中には不足してしまう。
  • 手指消毒剤不足。
  • 手指消毒剤がこの1 ヶ月全く入ってこない。
  • ガーゼ、酒精綿の不足。
  • 感染対策物資全般の納入が遅れている。
  • 困りごとは書ききれない程たくさんあります。個人防護具不足、アルコール不足、患者から発症者がでたら、仕事が出来なくなります。