8/17:新型コロナ5類移行に関する医療機関アンケート調査結果


新型コロナ5 類移行後 発熱患者対応を行う医療機関
8割以上が外来対応で苦慮
~発熱患者の事前連絡無し受診増加~

 今回、感染症に対する社会全体と医療現場での行動や考え方にギャップが生じ、そのことにより医療現場で新たな問題が生じていないか、会員医療機関を対象とした調査を行いました。
 5類移行直前(5/1~5/7)の新型コロナ定点把握は、県内で1医療機関当たり1.69人でしたが、直近(7/31~8/6)では、1医療機関当たり17.38人となっています。5類移行後、定点把握では約10倍に感染者が増えている中、7/25(火)~8/10(木)にかけて医療機関の外来対応に関する状況調査を行いました。
 以下、調査結果を報告します。

【調査方法】

 実施期間: 2020年 7月 25日(火)~ 8月 10日(木)
 実施方法: 会員医科医療機関宛にFAXで調査用紙を送信。
  ※FAX送信数:医科診療所(855件)

 回答数:855 件に対し 204件回答(23.9%)

【調査結果】

問1) 5/8 以降の発熱患者(コロナ疑似症患者)の対応について:

① かかりつけ患者のみ対応(24/196):12.2%
② かかりつけ患者以外も対応(144/196):73.5%

③ 他医療機関を紹介(5/196):2.6%
④ 対応していない(23/196):11.7%

※発熱患者(コロナ疑似症患者)に対し、自院で対応している割合は全体で8 割を超えている。
※「他医療機関を紹介」または「対応していない」医療機関の標榜科は下記のとおり。

整形外科4脳神経外科2外科1
皮膚科4泌尿器科1消化器内科1
眼科4心療内科1耳鼻咽喉科1
精神科4乳腺科1
産婦人科3肛門科1

問2) 問1で①または②と回答した場合、対応方法として該当するもの(複数回答可):

① 対応状況を県ホームページで公表している(142/168):84.5%
② 対応状況を県ホームページで公表していない(20/168):11.9%
③ 空間的動線を分けて対応している(136/168):81.0%
④ 時間的動線を分けて対応している(52/168):31.0%

※発熱患者(コロナ疑似症患者)への対応方法としては、茨城県ホームページに自院対応状況を公開し、院内では空間的動線を分けて対応している医療機関が多数を占めている。

問3) 問1で①または②と回答した場合、5/8 以降、発熱患者(コロナ疑似症患者)対応に関する困りごとは?:

① 有る(142/168):84.5%
② 無い(26/168):15.5%
※5 類移行後、発熱患者対応で何らからの困りごとを抱えている医療機関は対応医療機関の8 割を超えている。

問4) 問3 で「有る」と回答した場合、困りごとの内容は?(複数回答可):

① マスク未着用患者の受診増加(58/142):40.8%
② 発熱患者の事前連絡なし受診増加(93/142):65.5%

③ 症状悪化後に受診する患者の増加(11/142):7.7%
④ 咳止め等の上気道炎症状に対する薬剤が不足している(80/142):56.3%
⑤ 新型コロナ抗ウイルス薬が十分に供給されていない(8/142):5.6%
⑥ 新型コロナ5 類移行・外来医療費原則自己負担による検査等の手控え(42/142):29.6%
⑦ 自己負担が発生することに対する患者への説明対応の負担(37/142):26.1%
⑧ 新型コロナ治療薬において、重症化リスクのある患者への説明対応の負担(26/142):18.3%
⑨ 入院先の確保が困難(重症化リスクの高い患者への対応・入院調整煩雑)(27/142):19.0%
⑩ 医師・看護師等の医療スタッフの確保(36/142):25.4%
(ex.職員やその家族の新型コロナ罹患による行動制限・休業期間対応など)
⑪ 全体の感染状況をリアルタイムに把握できない(感染の波が察知できない)(62/142):43.7%

※発熱患者の事前連絡なし受診増加について

 発熱患者対応で外来対応医療機関が困っていることを見ていくと、「事前連絡なしの受診増加」が6割を超えている。自治体や医療機関のホームページ等でも、「発熱患者は受診前に医療機関に必ず電話連絡すること」を周知しているが、『事前連絡無し受診』により多くの外来対応医療機関が対応に苦慮している。
 高齢患者や慢性疾患を抱える患者は重症化リスクが高く、多くの医療機関では発熱患者(コロナ疑似症患者)と一般患者の動線を分けている。しかしながら、発熱患者(コロナ疑似症患者)が事前連絡無しに受診すれば、一般患者の感染・重症化のリスクが高まる。
7 月31 日~8 月6 日(31 週)の茨城県新型コロナウイルス感染症・定点把握では定点当たり17.38 と感染はなお増加傾向にある。このような状況で、上記のような受診行動が改善されなければ、感染者・重症者は増加する可能性が高い。
 マスク未着用患者の増加も含め、医療機関受診前の行動改善が重要となる。

※咳止め等の上気道炎症状に対する薬剤不足について

薬 剤不足に関して、原因の根本は医薬品の安定供給化に向けた取り組みが遅れていることにある。国策により、後発医薬品の数量シェアは8 割近くまで伸びているが、その中で後発医薬品の供給不足が起きている。後発医薬品メーカの不適切な製造が問題となり、それ以降、後発医薬品の取り扱い品目も減少の一途を辿っている状況にある。製造の効率化を追求するため、安価な海外原薬に依存し、設備や人件費の製造コストも賄えず様々な問題が発生した(毎年行われるようになった薬価改定による薬価の下落も大きく関係している)。
 今後は安定的に使用できる原薬の国産比率を上げることや不採算品目であってもしっかり生産できる体制づくり、国策として医薬品を安定供給できる仕組みを医薬品業界とともに再構築しなければならない。
 需要と供給のバランスが崩れた薬剤不足を解決するため、国の強いリーダーシップが求められる。

※全体の感染状況をリアルタイムに把握できないことについて

 5 類移行後、新型コロナの感染状況は1 週間おきの定点把握により確認されているが、感染の波がリアルタイムに把握できないことを不安視する医療機関が多い。
 新型コロナにおいて感染の波を以前のように把握することは難しいが、厚生労働省が新型コロナ感染拡大時の注意喚起目安として4 指標を設けた。指標の早期活用や、また、これまでに感染拡大した時期の定点あたりの感染者数を参考指標として情報公開することなどにより、医療機関・患者の双方で感染拡大防止対策につながる可能性があると考えられる。

【今回の調査に寄せられた医療機関からの意見】

●各医療機関での診療体制について
  • かかりつけ患者のみ対応している医院でも、もう少し地域の為に門戸を開いてやってほしい。
  • 近医で、自院の発熱検査について、事前連絡等も一切無く、勝手に当院受診を促している病院があり困っている。また、内科標榜の医院、かかりつけ医に受診を断られ当院へ来る患者が非常に多い。当院も通常診療と並行して発熱対応枠を増やして対応している。近医には、自院のかかりつけ患者は責任をもって対応していただきたい。
  • 紹介状なく、事前連絡もなく、患者へ直接当院に受診・相談する様に指示される医療機関が散見される。
  • 5 類になっても発熱患者は診ない、かかりつけでも断る等、5 類前とかわっていない。検査だけの機関も多い。当院では全て対応している。
  • 発熱患者対応と公表していながら、未だに抗原検査すらせずに対面診察もせず電話で話すのみで解熱剤等のみを処方している医療機関があり、またその受診翌日などに当院を受診してそういった経過を話され、抗原検査を施行して結果的にコロナ陽性でゾコーバなどを処方するケースがこの2週間で5件以上あり、まったくもって二度手間になっています。検査をこの時期になっても提供しない医療機関は何を考えているのか理解に苦しみます。
●5 類移行後もひっ迫する医療機関の状況について
  • コロナ感染者の急増あり、いっぱい、いっぱいです。朝から電話が鳴りっぱなしになります。マスコミでの報道もほぼなく、感染増加の意識がない方が多いです。先週、当院スタッフ3 人が感染、1 週間発熱外来ストップしました。
  • 日常業務(診療・健診・ワクチン接種などに)加えて、感染患者の対応を医師1 人、看護師1~2人で行うことの大変さに疲れています。思っている以上に陽性患者が多く、クリニック自体が共倒れにならないか心配ばかりです。ずっと続ける自信がありません。
●5 類移行後の患者の考え方について
  • 患者の意識が低下している(かぜ症状があっても受付で申し出ない)。
  • 熱発していても検査を拒否する人がいます。感染拡大を防止しようとする意識の低下。
  • 5 類になっても2 類の時と何も変わらない対応をしなければいけない。患者さん側は5 類になった事で、熱があっても関係なく院内に入ってきてしまう。あいまいになった分対応が大変です。
  • 風邪症状の患者さんが直接窓口に来るケースが増えています。玄関に貼り紙をしてお知らせしているのですが。
  • 発熱しても仕事に行ったり、外来に来てもコロナ流行状況をまったく知らない方々が多すぎます。そのため、通常患者と発熱患者で場所を分けているため待ち時間が発生してしまい文句を言われることも多々あります。
  • 県のHP があいまいで患者も混乱し、スタッフも案内に疲弊している。
  • 行政の広報やマスコミ報道で「発熱外来」受診前には必ず「事前に連絡」を発信してほしい。
●その他
  • 新型コロナ治療薬を処方するにあたっての同意書取得の義務を廃止して頂きたい。現場の手間が増えています。
  • コロナ治療薬が高額で薬局が不良在庫を抱えたくないため最低限の在庫しか置いていない。取り扱い薬局が限られている。県ホームページで公表をお願いします。
  • 薬剤不足が一番問題です。