10/11:「オンライン資格確認」に伴う医療機関トラブル調査(第2報)
70歳以上高齢者の窓口負担割合『相違』
県内32医療機関で48件確認
マイナ対応で8割を超える医療機関が業務の「負担増」を実感
医療機関では、2023年4月よりオンラインによる資格確認が実施できるよう体制整備が義務化されました。
今年5月に行った当会のオンライン資格確認に伴う医療機関トラブル調査では、オンライン資格確認システム運用中の茨城県内医療機関(190医療機関)のうち57.9%で各種トラブルが発生していることが確認されました。その後も様々なトラブルが確認されています。
今回、前回調査から3ヶ月経過した8月時点での各医療機関オンライン資格確認システム運用状況を確認すべく、第2弾の調査を実施致しました。様々なトラブルが解決されない中での拙速なデジタル化推進や健康保険証の廃止は、今後、医療現場に更なる混乱をもたらします。医療のデジタル化は避けて通れませんが、医療機関窓口等で、患者や医療従事者に過重な負担が生じないようにすべきです。
以下、調査結果を報告します。
【調査方法】
実施期間: 2023年 8月 21日(月)~ 8月 31日(木)
実施方法: 当会に所属するFAX送信可能な会員医療機関宛にFAX で調査用紙を送信
※FAX送信数:医科診療所(1,475件)
回答数 :1,475件に対し 199件回答(13.5%)
【調査結果】
問1)区分
- 医科診療所 : 157
- 歯科診療所 : 35
- 病 院 : 2
- 無 回 答 : 5
問2)6月の診療状況について。
マイナ保険証で資格確認を行い、確認できた患者の1日の件数は何件ですか。
また、その割合は1日の概ね何%ですか。
※ 問2 の結果データは、「件数」と「割合」の両方に回答した113 医療機関の平均値。
- マイナ保険証で資格確認を行い、確認できた患者(1 日の件数) : 4.03 人
- マイナ保険証で資格確認を行い、確認できた患者の割合(1 日の概ね何%) : 5.77%
9月29日に開催された「第168回社会保障審議会医療保険部会(厚生労働省)」で示された、マイナ保険証による資格確認利用率2023年6月(5.58%)と当会調査の値はほぼ同等の数値となった。
このことから、全国的にも、また県内においても、現在のところ医療機関受診時には、多くの患者が健康保険証を持参していることがわかる。保険証廃止は来秋に迫っているが、マイナ保険証の利用は一向に進んでいない。
◆ オンライン資格確認の利用状況について
2023年4月からオンライン資格確認導入が原則として義務付けられている。9 月29日の第168 回社会保障審議会医療保険部会(厚生労働省)で示された資料(「調査結果PDF」のP.7~8参照)によると、運用開始施設における今年4~8月のオンライン資格確認の利用状況(全国)は下記のとおり。
2023年4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | |
保険証 | 93.70% | 94.00% | 94.42% | 94.96% | 95.33% |
マイナ保険証 | 6.30% | 6.00% | 5.58% | 5.04% | 4.67% |
※オンライン資格確認導入・原則義務化以降、オンラインによる資格確認において、マイナ保険証による利用率が減少している。拙速なデジタル化により、デジタル化のメリットよりも不信感が先行している結果と考えられる。
問3)マイナ保険証の患者への対応で、新たに受付業務は増加しましたか、減少しましたか。
- 増 加 : 174( 87.4% )
- 減 少 : 9( 4.5% )
- 無回答 : 16( 8.01% )

マイナ保険証の患者対応を行う医療機関の9 割近くが受付業務の負担増を実感。コロナ禍で多忙な医療機関に追い打ちをかけた形となっている。現在のマイナ保険証利用率は5%程度であり、今後利用率が増加すれば、医療機関の負担も更に増加すると考えられる。
問4)どのような業務に時間や人手がかかりましたか。(複数回答)
※問3 で「増加」と回答した医療機関のみ回答
- 患者への説明 : 137 / 174( 78.7% )
- カードリーダー等の機器の操作補助 : 148 / 174( 85.1% )
- エラー時のベンダーとの対応 : 70 / 174( 40.2% )
- 資格の確認作業 : 108 / 174( 62.1% )
- 公費負担(子ども医療費、生活保護等)の確認・入力作業 : 70 / 174( 40.2% )
- その他 : 7 / 174( 4.0% )

オンライン資格確認のための顔認証付きカードリーダーの操作補助、操作の説明等に多くの医療機関の窓口で時間を費やしており、これまでの業務に加え、医療機関での受付業務に負荷がかかっている。少なくとも現時点では、オンライン資格確認の導入により「事務作業負担が軽減された」とは言い難い状況となっている。
問5)70歳以上の高齢者でオンライン資格確認の画面の「負担割合」と健康保険証の券面の「負担割合」に相違があったとの報告があります。このような事例はありましたか。
- あ り : 32 / 199( 16.1% )
- な し : 150 / 199( 75.4% )
- 無回答 : 17 / 199( 8.5% )

「あり」と回答した医療機関は32医療機関。茨城県内16の市にある医療機関で同トラブルを確認(カッコ内は医療機関件数)。
- 水戸市(3)、土浦市(5)、古河市(3)、龍ヶ崎市、下妻市、常総市、常陸太田市、高萩市、取手市(2)、牛久市(4)、つくば市(3)、ひたちなか市(3)、守谷市、筑西市、かすみがうら市、桜川市
- 「相違件数」まで回答した医療機関は26医療機関、70 歳以上の負担割合相違件数は合計で48 件を確認。
- 70 歳以上の負担割合相違は、現在、国で行われている総点検とは別のトラブル事例。総点検はマイナ保険証のひも付けに関するものだが、本トラブルは高齢者の負担割合の変更等によるもの。原因として、誤った負担割合入力(ヒューマンエラー)とシステム問題の二通りが存在する。
具体的事例は下記のとおり。
【負担割合相違の内容】
- 負担割合の相違(70歳以上では2割 or 3割、75歳以上では1割 or 2割 or 3割のケースがある)
- 健康保険証の券面とオンライン資格確認の割合が異なる。
- 健康保険証の券面とオンライン資格確認で割合が異なるので、市町村に問い合わせる。
- オンライン資格確認での割合が合っているケースもあれば、健康保険証の割合が合っているケースもある。
- 8 月から負担割合が変わっているのに、マイナ保険証は元の割合のままとなっている。
- マイナ保険証では「1割負担」と表示されたが、後期高齢者医療被保険者証では「2割負担」と記載されていた。
- 本来2割負担のところ、3割負担で支払ってもらっていた。
- オンライン資格確認において、1回目時は3割で表示されたが2回目は2割で表示された。
問6)厚労省は8月からマイナ保険証利用による資格確認ができない場合、患者に「資格申立書」を記載させるとの新たな対応を示しました。この件に関するお考えをお聞かせください。(複数回答)
- 健康保険証の持参で十分 : 162 / 199( 81.4% )
- 患者に書かせるべきではない : 57 / 199( 28.6% )
- 患者とのトラブルを懸念 : 114 / 199( 57.3% )
- 受付の対応が増える : 139 / 199( 69.8% )
- わからない : 17 / 199( 8.5% )

マイナ保険証によるオン資確認で資格情報が「無効」などと判定された場合、健康保険証が無い場合でも『被保険者資格申立書』を患者にその場で記載してもらい、患者自己負担分を受領すれば保険診療が成立する(※患者は記憶に基づき記載するので、記載間違いがあり得る)。
医療機関としては一部負担金割合に「わからない」とチェックされた場合、何割受領すべきか判断ができない(※70 歳以上の場合、所得で一部負担金の割合が異なるので、窓口負担割合を確定できない場合は負担金に過不足が発生する可能性がある)。
◆24年秋からは、医療機関窓口での資格確認方法は5種類に
来年秋の健康保険証廃止により、医療機関での資格確認方法は下記5種類となる。被保険者資格申立書や資格確認書、資格情報のお知らせなど、健康保険証の廃止延長・存続を前提とすれば、必要のない確認書などが相次いで予定されている。
- 健康保険証 : 24 年秋に廃止後、最長1 年間は有効とする経過措置あり。
- マイナ保険証 : 顔写真無し、暗証番号無しの新カードが発行予定。
- 被保険者資格申立書 : マイナ保険証で資格確認できない場合、患者に資格情報や自己負担割合等を申告してもらう文書。
- 資格確認書 : マイナ保険証を持たない人に交付。
- 資格情報のお知らせ : オンライン資格確認未導入医療機関において、マイナ保険証が利用できない状況がある場合、資格情報を記載した新たな文書。
問7)政府は2024 年秋に健康保険証を廃止する方針ですが、保険医協会・保険医会は現行の健康保険証の存続を求めています。健康保険証を残す必要があると考えますか。
- 必要 : 183 / 199( 92.0% )
- 必要ではない : 11 / 199( 5.5% )
- 無回答 : 5 / 199( 2.5% )

問7)オンライン資格確認システム運用上のトラブルに関して、これまで報道されていないような事例等があればご記載ください(抜粋)。
- 表示が『●』となってしまう漢字がある。旧字・外字が表示されない。(例:「髙」)
- 茨城県の『茨』が●になる。
- 氏名の誤表示(事例:渡辺さんの表示が、「~さま渡」「辺~さま」となっていた)。
- 住所が異なる。
- データが存在しない。
- 外国人のデータが表示されない。
- 8 月下旬時点、未だに保険証があっても、資格無が多数ある。
- 旧姓のまま表示されるケースがある。
- 国保、後期高齢保険の有効期限が表示されない。
- 資格喪失後も、有効と表示される。
- 国保と社保で患者1 人に対し、どちらも「該当あり」の事例があった。
- 発熱外来を駐車場で行っている。マイナ保険証の場合、資格確認システムが院内にあるので、発熱患者の保険証確認ができない(顔認証に対応できない。暗証番号を伝えたくない人には対応できない)。
- 顔認証が出来ない。
- 端末(機械)の操作が一人で出来ない患者が多い(高齢者の場合、捜査が分からないケースが多い)。
- 親子同一の保険者に加入されているが、子どもだけ資格無効表示が多数。
- 兄妹同一の保険者に加入しているが、1 人は有効、1 人は該当無し(実際の保険証は有効)。
●その他添付資料については「調査結果PDF」のP.7~16をご参照ください。