先発医薬品と後発医薬品の差額の一部を自己負担とする保険給付外しに反対します(要望書)


2023年12月15日

厚生労働大臣 武見 敬三 殿

一般社団法人 茨城県保険医協会
会 長   高 橋  秀 夫

時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 政府は社会保障の改革工程表に、「特許が切れて安価なジェネリック医薬品(後発品)がある先発薬について窓口負担を増やす」と盛り込む方針を示しました。厚生労働省では12月8日の社会保障審議会医療保険部会で、先発薬の自己負担見直しとして、後発品との差額の1/4を患者負担(※保険外の薬剤自己負担)に上乗せする案を軸に検討し、年内にも詳細をまとめるとしています。これはいわゆる選定療養であり、後発品の使用を促進させ、医療費を抑制するものです。

 薬剤の選択は、医師が診断の結果に基づき、患者の状態や治療上の効能・効果などを考慮して判断・処方するものであり、ここに後発品使用促進の概念を持ち込むべきではありません。患者の命に直結する問題でもあり、経済的な概念が持ち込まれることに断固として反対します。先発品・後発品の選択も含めて医師の処方権が優先されるべきです。

 本件に関するこれまでの議論では、「参照価格制度」について議論される場面もあり、ドイツを例に、参照価格以上の部分について患者負担とし、その範囲の中で処方権をコントロールするという、医師の処方に係る裁量を狭めるような議論もされています。今回のことから、保険外の薬剤自己負担が際限なく拡大される可能性は否定できません。

 また、後発品使用促進により捻出される可能性のある財源を「創薬力強化」にあてるといわれておりますが、その金額は100億円規模であり、創薬力を強化するほどの資金捻出はできないと考えられます。

 2002年改正健康保険法附則では、「医療保険各法の給付率については将来にわたり7割を維持すること」と定められております。今回の議論が先例となり、給付率の変更に穴を開けていくことのないよう、慎重な議論をお願い致します。

以上